「耳をすまし、目をこらして」~一原有徳氏の作品について

“版”として使われた鉄製の歯車をモチーフにした今回の案内状
“版”として使われた鉄製の歯車をモチーフにした今回の案内状

 

 

一原有徳記念ホール開設

 

2011.4.2に小樽市美術館リニューアルOpenに際し、同館3階に一原有徳記念ホールが開設されました。氏が生前使っていたアトリエをそのまま移築したコーナーで実際作品を制作している雰囲気を味わうことができる。作品も常設展示されることになり、一原有徳氏の版の世界を見るということが、身近になりました。現在「幻視者 一原有徳の世界」を企画展示中。これから、さまざまな企画展を行う予定だそうです。楽しみです。アトリエを再現した部屋や、文学館の展示の中に、一原氏が実際「版」に使用した多くの鉄製の歯車を見ることができる。その歯車自体がアートに見えてくるから不思議です。。また、実際にアトリエに長年おかれていたといわれている壊れた柱時計。その振り子部分の中に二個の目覚まし時計が裏・表にし、古い布でしばりとめられている。その不思議な柱時計も今回そのまま展示している。きっとそれも何かの表現のひとつだったのでしょうとご家族が話されていたのが印象的でした。同時に俳句・山岳小説家としても有名な氏の一面をかなり興味深く展示している同館2階の文学館の展示「一原有徳俳句と山岳小説の世界展」もごらんください。

 

   

小樽に来た際は是非、足を運ぶ価値のある美術館・文学館です。 

 

市立小樽美術館・文学館  小樽市色内1-9-5 ☎0134-34-0035

 

 

  鉄の焼き版で制作した作品
  鉄の焼き版で制作した作品

 

 

 

 

美術館へ足を運ばなくても、普段、何気ない時に作品を見てほしいとの一原有徳氏のご家族のご好意で、たくさんの一原有徳氏の版画を「はち」にて展示させていただいています。「見る人が感じるままでいいんだ」と一原氏御本人が語っているよう宇宙を感じたり、海の中だったり、ゆっくりと珈琲を味わいながら見ていただきたい作品です。

 

一原有徳氏プロフィール

 

1910年(明治43)徳島県生まれ。小樽 高等実修商科学校に学んだ後、小樽地

方貯金局に入局し、第2次世界大戦中の応召時をはさみ、1970年まで同局に勤務。

1952年油彩画を小樽市展に出品 し北海道新聞社賞受賞、1954年から全道美術協

会展に出品し、61年会員に推挙される。1958年の全道展、国画会展にモノタイプ

版画を出品。1960 年の日本版画協会展出品作が評価され神奈川県立近代美術館な

どに作品が収蔵される。同年朝日選抜秀作展、海外を巡回した現代日本版画展

1962年、64年の東京国際版画ビエンナーレ展に出品するなど数多くの展覧会に出品

し活躍。1回切りの転写によるモノタイプ版画や、金属を様々な道具・薬品で加工す

る凹 版の実験により、荒々しいマチエールや金属版の無機質な美しさを持つ力強い

作品を生み出している。登山家、俳人としても知られ、作品の奥深いところにその

境地が反映されているという。氏の版画は具体的なものを描写せず、日常性、社会

性を越えて、未知なる世界へと広がり、さらに立体へも向かっていっている。

  店内での展示
  店内での展示